医師免許がないからと“彫師”を片っ端から逮捕…タトゥー迫害の裏にある行政の認識不足と不当な偏見

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 また、ヨーロッパ各国の王室も日本の刺青を愛し、明治14年にジョージ五世が来日した際に刺青を入れたのを皮切りに、ロシアのニコライ二世やイギリスのアーサー王子なども続々と日本で刺青を入れたと伝えられている。日本の彫師の技術に惚れ込んだ海外の人が来日時に刺青を入れる構造は現在でも変わっておらず、最近でもレディー・ガガが大阪のタトゥースタジオで刺青を入れたエピソードはニュースにもなった。

 以上見てきたように、日本ではもともと刺青は暴力団組員だけがしているものでは決してなかったし、海外の人々からも高く評価されるものであったのだ。

 このように、現在行われているタトゥーに対する不当な迫害には問題があるのだが、では、彫師の側が完全に正義で、この問題のすべてが刺青文化を解そうともしない行政の側に問題があるのかと言えば、そうでもなく、彫師にもまったく問題がないわけではない。特に、衛生面の問題は強く指摘されている。

 ほとんどのタトゥースタジオが、針を使い回さない・施術中はきちんとゴム手袋をするなど、衛生面で当たり前にやるべきことをやっている一方で、少数そうでない人たちもおり、それが原因でタトゥースタジオがC型肝炎などの感染源になっていると言われている。今回の騒動もこの衛生面の問題が原因の大きな一つとなっているのだが、そのような状況を鑑み、彫師の岸氏と一緒に前掲「BAZOOKA!!!」に出演した弁護士の吉田泉氏は今後の日本の刺青文化を守るためどうすればいいかをこう語っている。

「「針を身体に入れるという行為なので医師法違反」というのは馬鹿げてますけれども、かといって無制限でいいのか、何もなしで野放しでいいのかというとそれも違うかなと思います」
「いま考えているのは、岸さんをはじめ一流の方々が最低限守っている衛生面の基準というのがあって、それを抜き出してガイドライン化して、で、「彫師の方々、これ守ってくださいね」というような法整備をしていくべきだと考えています」

 都市部を歩けば腕や手などにタトゥーを入れた外国人観光客とすれ違うことは珍しいことでもなんでもない。東京オリンピックを機にさらなる観光事業の発展を考えるのであれば、「刺青」「タトゥー」に対し日本人がどのような認識をもつのか、偏見を取払い、改めて考え直してみる必要があるのではないだろうか。
(井川健二)

最終更新:2017.12.05 10:07

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