あの本庄保険金殺人事件・八木茂死刑囚に肉薄し続けた記者が語る意外な素顔、そして新たに浮かんだ真相

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 あるときは「好感度記者ランキング」なる順位表をスナックの壁に張った。ちなみに10位には、フジテレビの安藤優子キャスターがランクインしていた。

〈「本当はナンバーワンなんだけどさ」
 ナンバー2にわたしを指名した。恋する乙女でもあるまいし、わたしはちょっと動揺、そんな己に呆れてしまった〉

 八木に頼まれ、成田空港までカレンを迎えに行ったこともあった。

〈週刊誌記者とはいえここまでやっていいものか迷いもあったが、逃亡の手助けをしているわけでもなく、まして殺人犯と決まったわけではない〉

 日を追うごとに深まる八木との仲。そんなとき、〈「泊まっていきなよ」と誘われたこと〉もあったという。

〈こんなスクープ滅多にあるものではない。しかし、「どうしても編集部に戻らなければならない」とわたしは嘘をついた。怖かったのだ。「そうか」と伏目がちに呟いた八木さんの顔が、今でも忘れられない〉

 記者である以前の、ひとりの人間としての直感がそうさせたのか。そして2000年3月24日、〈「フィリピンの息子に送りたい」とカレンにせがまれたキックボードを買うため、(中略)新座のディスカウントストアにいた〉際、八木ファミリーの一員とも見られかねない仲となっていた小林氏の元に、相棒カメラマンから八木逮捕の一報が入る。逮捕容疑は、〈フィリピン女性を知人男性2人と偽装結婚させたとして公正証書原本不実記載、同行使容疑〉だった。

 本庄署からの送検時、八木が満面の笑みで手錠がかかった両手を掲げるシーンは、当時の報道番組で頻繁に流された。しかし、八木の笑顔を消す報道が続く。同年10月19日にはNHKが〈「武まゆみはAさんにトリカブトを飲ませた」と報道〉し、01年3月30日の浦和地裁での初公判では、八木は保険金殺人の罪状認否で全面否定したものの、武まゆみは〈「捨てられたくないあまり、人の命を奪ってしまった。八木被告にも罪を認めてほしい」と(中略)決別宣言〉をした。1年ぶりに再会した八木は、〈痩せこけ老眼鏡を掛け(中略)別人〉だったという。

 同年9月19日、小林氏がカレンに公判直後に面会をすると〈うさぎのような赤い目に涙を一杯溜め(中略)「いままで嘘をついてごめんネ。ワタシ、本当は弁護士になりたかったの……。もう日本はこりごり」〉と語った。彼女はのちに懲役15年が確定した。

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