「売れてる本」の取扱説明書④『日めくり まいにち、修造!』(松岡修造)ほか

“体育会系相田みつを”松岡修造は本当に「ブレない男」なのか? 年を追うごとに変わっていく修造語録を読み解く

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

 その2年ほど前に刊行された『本気になればすべてが変わる─生きる技術をみがく70のヒント』(文藝春秋)を開くと、松岡がタイガー・ウッズとゴルフ大会で一緒にラウンドした時のエピソードが書かれている。ウッズはいい球を打てたときには自分で「ナイスショット!」と誉め、ミスショットをすると落ち込む様子を見せずに「ネクストタイム!」と言ったそう。「自分の思いを言葉に出し、自分をどんどん盛り上げていく」とウッズから学んだことを記しているが、その2年後に出した本では、「ネクストタイム!」が、ウッズから聞いたとの経緯説明はなく、自分の言葉として宣言されている。

 2009年に出た『本気になればすべてが変わる』ではアメリカのメンタルトレーニングの先生に「レストランでメニューを開いたら、5秒以内に食べたいものを決める」という課題を与えられ、その通りに実践してきたエピソードを語っているが、2012年に出た『人生を変える 修造思考!』(アスコム)では、「僕は、一度のオーダーで終わることはほとんどありません。(中略)僕のテーブルからメニューがなくなることは絶対にありません」と書いており、強気のスローガンは、経年によって、微調整を重ねて新たなスローガンとして上書きされていくのである。「松岡修造=ブレない男」という方程式で彼を評するのはまったく適確ではない。彼のスローガンは、それなりにブレてきたのだ。

 全体的に、ブラック企業のスローガン的な無理強いが含まれるところは気になる。「日めくり」カレンダーにある「無理なんて無理!できないなんてできない!」という言葉の解説には、「マイナスの言葉でも、数学のように二つ掛け合わせると、なぜか不思議とプラスの言葉に変わるんだ」とあるし、「諦めないを諦めるな!」の解説には「昨日よりも今日、今日よりも明日、必ず前に進むことができる」とある。なんだか、“和民グループ“っぽい。いまだに会社案内の経営理念体系に「勝つまで戦え、限界からあと一歩進め、結果がすべてである」「常に謙虚なれ 常に感謝せよ」「額に汗した利益のみを、利益と認める」などと載せているこの会社のスローガンと松岡修造のエッセンスは、彼としては心ならずであったとしても、方向性が近似している。

 これまで分析してきたように、松岡修造の言葉は流動しているし、個人として強制性を発動させようと使っている言葉ではない。相田みつをから続く、時代に寄り添った正統派の系譜だ。しかし、雑なスローガンを欲する“和民”的な面々に甘い蜜を提供していることは確かである。要するに、松岡修造の言葉はどこまでも純粋に作られたものなのだが、それを「松岡修造だって、こう言っているんだよ」という用い方をする誰かがいるならば、その途端に危険が生じるという仕組みになっているのだ。
(武田砂鉄)

■武田砂鉄プロフィール
1982年生まれ。ライター/編集。2014年秋、出版社勤務を経てフリーへ。「CINRA.NET」「cakes」「マイナビ」「Yahoo!ニュース個人」「beatleg」「TRASH-UP!!」で連載を持ち、「週刊金曜日」「AERA」「SPA!」「beatleg」「STRANGE DAYS」などの雑誌でも執筆中。『紋切型社会 言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社で、2015年ドゥマゴ文学賞受賞。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

新着芸能・エンタメスキャンダルマンガ・アニメビジネス社会カルチャーくらし教養

人気記事ランキング

総合
いいね! 数
1 青山繁晴が森友問題で晒した嘘と醜態!
2 政府が隠していた籠池手紙の中身が判明
3 視聴者の会がNEWS加藤シゲアキを攻撃
4 山本太郎が安倍のインチキを暴いた!
5 核禁止条約に不参加に! 渡辺謙が批判
6 官邸、山口敬之がネトウヨ妄想に丸乗り
7 松本人志、森友スルーの裏に大阪万博
8 安倍が木村草太嫌がり報ステ出演中止
9 安倍応援団の情報操作に騙されるな!
10 安倍政権御用ジャーナリスト大賞
11 ECDの妻が明かした夫のがん闘病
12 山口敬之、“安倍太鼓持ち”の歴史
13 橋下徹が籠池証人喚問以来、完全沈黙
14 恵俊彰が田崎史郎を「政権の代弁者」と
15 昭恵夫人が籠池妻に小川榮太郎を紹介
16 2枚目のFAXを封殺、官邸の情報操作
17 マツコが“忘れられない男”と首都高で
18 渡辺謙が核軍縮に反対の安倍政権を批判
19 安倍100万円振込票と長女の目撃証言
20 田崎史郎に自民党が政党交付金から金
PR
PR
12枚目のFAXを封殺、官邸の情報操作
2政府が隠していた籠池手紙の中身が判明
3 昭恵夫人付役人から籠池に予算化報告
4安倍が防大卒業式で軍人勅諭ばり訓示!
5籠池理事長が「安倍首相から100万円」
6安倍100万円振込票と長女の目撃証言
7橋下徹が籠池証人喚問以来、完全沈黙
8迫田、松井、昭恵も証人喚問せよ
9 核禁止条約に不参加に! 渡辺謙が批判
10“第二の森友学園”関係者を最高裁判事に
11安倍応援団の情報操作に騙されるな!
12籠池証人喚問で自民党議員の質問に唖然
13官邸、山口敬之がネトウヨ妄想に丸乗り
14昭恵夫人の口利きで8千万円の予算が
15田崎が“籠池が稲田にセクハラ”の噂を
16稲田夫が籠池と財務局との交渉に同席
17籠池の依頼で昭恵夫人が口利きか
18松井知事が森友認可前に私学課に圧力?
19国税の税務調査を使った報道への圧力
20橋下後援会長の息子と籠池と元在特会
PR
PR

人気連載

アベを倒したい!

室井佑月

室井佑月が斎藤貴男と「共謀罪」を徹底批判!「安倍政権に逆らう人が片っ端から逮捕される」

アベを倒したい!

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄

"体育会系相田みつを"松岡修造は本当に「ブレない男」なのか? 年を追うごとに変わっていく修造語録を読み解く

「売れてる本」の取扱説明書

ネット右翼の15年

野間易通

高市早苗はいかにして"ネオナチ"と出会ったか

ネット右翼の15年

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

戦争を放棄せよ! 軍事力がなくても侵略と闘う方法はある、自由のために闘える!

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」