橋下市長引退会見でもマスコミ批判を繰り広げ、今後についてはだんまり! なぜ大阪は橋下徹に騙され続けるのか?

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 橋下氏が政治家になった2008年当時、8割を超す異常な支持率に一も二もなく乗ったのは、まず在阪局の情報バラエティ番組だった。たとえば、毎日放送(MBS)の『ちちんぷいぷい』は、若手アナウンサーを「ちちんぷいぷい政治部キャップ」という設定にして“政治部ごっこ”を始めた。毎日、登庁前の橋下氏を直撃し、「けさの橋下さん」というコーナーで「今日のネクタイは誰が選んだんですか」などという愚にも付かない“取材成果”を垂れ流し続けた、という。本書では、当時を知る同局関係者がこのように語っている。

「絶大な橋下人気もあってコーナー視聴率が目に見えて上がった。それで、自分たちにもできるんだ、政治ネタを扱ってもいいんだと自信になり、単純に盛り上がってしまったというのはあるでしょうね。(中略)独自取材で集めたネタや批判的な視点があるわけじゃないので何か大事なことを引き出せるわけもないんですけど、とにかく現場に行って、なんか一生懸命わちゃわちゃやってる感じだけは画面から伝わる。まあ内輪受けなんですけども、それこそが求められていた面はあると思います」

 この話から、松本氏は、橋下氏とテレビ局の身内意識、バラエティを担当する制作局の報道局に対抗する身内意識、番組と視聴者の身内意識を指摘して、こう書く。

〈そういう内輪の論理が重なって「われらが橋下さん」像ができ上がり、客観的な検証・報道ができない空気が醸成されていったのではないか〉

 11年の前回ダブル選では、テレビばかりか新聞も含めて、都構想を争点としたい橋下・維新側の思惑に丸乗りし、橋下氏が府政において実際のところどれだけの成果を上げたのかを検証することなく、「都構想、是か非か」の報道に狂奔する。その選挙で市長に鞍替えした橋下氏は、圧勝の自信からか、気に入らない報道や記者の質問に対して激しく攻撃するようになる。都構想の行方を報じたABCの記者に対して、ツイッターで〈あの取材記者は「馬」だったのか?確か人間だったはず。ほんと馬の耳に念仏だよ〉と攻撃したかと思えば、囲み取材で教員への国歌の起立斉唱命令について質したMBSの女性記者に激昂し、得意の論点のすり替えや詭弁を繰り出しつつ、「ふざけた取材すんなよ」「とんちんかん」などと26分間にわたって面罵し続けた。

 情けないことに、この女性記者に対して、周りのメディア関係者は一切、擁護や同情を見せなかったという。「市長も大人げなかったけど、あれは記者が悪い」「彼を相手にああいう食い下がり方をしたら勝ち目がない」などと、したり顔で評する者ばかりだったというのだ。権力者を監視するべき記者たちが、完全に橋下氏に取り込まれていたのである。

 しかし、橋下氏とメディアの蜜月関係にも何度か亀裂が入る。大きかったのが、13年5月の慰安婦発言。「従軍慰安婦が当時必要だったことは誰でもわかる」という発言を報じた朝日新聞・毎日新聞をはじめとする報道を、橋下氏は「大誤報をやられた」と攻撃し、毎日行っていた囲み取材の中止を宣言する。明白な責任転嫁にもかかわらず、記者クラブ側は抗議もせず、説明も求めず、まったくの無策。橋下氏が自己都合で中止宣言を撤回し、やっぱり継続することになった囲み取材にいそいそ集まると、朝日の記者が「一言一句、全部正確にしゃべれと言ったつもりはございません」「(慰安婦制度が)必要とは何だったのか(どういう意味なのか)質すべきだった」と、口々に取材の至らなさを反省してみせた、という。その光景を松本氏はこう書いている。

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