『現代用語の基礎知識』がネトウヨに「反日」「偏向」と攻撃され炎上してるので、本当に偏向してるか読んでみた

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 たとえば、「日本政治」のジャンルには「安倍晋三政権」という項目があるが、そこでは、安倍晋三の生い立ちや政治的経歴、政策などの解説にまるまる1ページ割かれている。もちろん、「積極的平和主義」や「戦後レジームからの脱却」「美しい国、日本」「一億総活躍社会」などの言葉も登場する。これらは安倍政権の“PR語”だ。「中立」などと吠えるのならば、こういった政権発の言葉を収録することもまた問題視すべきだろう。 

 ようするに、原則論として、言論の自由が保障されている出版活動に対し「偏向」とか「中立」を要請すること自体がナンセンスであるし、加えて、ごく常識的に考えても『現代用語の基礎知識』のなかに時の政治に対して批評的・批判的な要素が入るのは「現代用語」を記録するという同書の性格から至極当然である。ましてや、今夏の安保法案の可決には国民の約8割が反対し、多様な人々が安倍政権に対する懸念を表明したのだから、2015年という時代を総括するときにここを避けて通ることは不可能。仮にそんなことをすれば“言葉の年鑑”としての意義それ自体がなくなってしまうからだ。

 日々、おびただしい量のニュースが溢れ、塗り替えられていく昨今。そもそも新語・流行語というのは、日々新たなものが誕生してはやがて消える性質をもち、何十年も人々の間で使われるケースのほうが珍しい。だが“消費期限”が短い言葉だからこそ“時代の空気”が反映されるとも言える。ゆえに、政治・経済の動向も、科学知識も、若者文化も、あるいはネットジャーゴンまでもかき集め、それらが示す“時代性”を刻印するのが『現代用語の基礎知識』の仕事であるはずだ。

 にもかかわらず、ネトウヨたちは、同書を読みもせずに、「左翼だ!偏向だ!」とわめきたてている。彼らは、現在の政治にいっさいの批判的言論を許さない全体主義国家に憧れているのだろうか? あるいは、新しい言葉を収集・解説し、世相を後年に残すことは不要だとでも言うのだろうか。

 であれば、それは「現代」を否認し「知識」を拒絶しているだけだ。言い換えれば“現在進行形の歴史修正主義”である。

『現代用語の基礎知識』には、こうした下劣なネトウヨの攻撃に屈さず、今後も時代の空気を刻み続けていってほしい。
(小杉みすず)

最終更新:2018.10.18 03:40

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