BPO委員の是枝監督と『報ステ』更迭の古賀茂明が安倍政権の圧力を徹底批判!「政治介入こそ放送法違反だ」

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 これは歴史を反省することなく、むしろ戦前を指向するかのような安倍政権の政治姿勢にぴったり当てはまる話だろう。事実、安倍政権は放送法をないがしろにするばかりか、圧力によって報道の現場を萎縮させ、大本営発表化させたがっているようにしか思えない。

 一方、情けないのは当事者たるマスコミだ。古賀氏も「大手メディアの記者はジャーナリストである前に会社員」「会社の方針に従って問題さえ起こさなければ、一生、高給が保証される。だから、その既得権を守ることが最優先になってしまう」と構造的な問題を突いているが、この浅ましい倫理観に安倍政権は目を付けたのだ、と古賀氏は言う。──マスコミのトップらは嬉々として安倍首相との会食やゴルフに出かけ、現場はそうした「トップの意向を慮」ることで政権批判がやりづらくなる。「政権批判をしたとしても、旗色が悪くなれば、すぐに手を引いてしまう」(古賀氏)のだ。

 同じように是枝氏も、こう苦言を呈する。

「意見書を公表した後、BPOに寄せられた反響には放送関係者からの激励も少なくありませんでした。でも、嬉しい半面、「なんだかなあ」という気持ちにもなってしまう。だって公権力としっかり対峙して戦うべきは放送局自身であって、BPOではないでしょ? BPOは放送の自主自律を守るための第三者機関にすぎず、TV局の用心棒ではないんです。そう考えると、最も情けないのは放送界なのかもしれません」

 しかも、さらに問題なのは社会の空気だ。是枝氏は「今の状況がすべてそうだとはいいませんが、国民が権力のチェックをメディアに託しているというよりは、むしろ権力と一体化して「どうしてマスコミは政権に文句を言うんだ?」と、メディアへの反発を深めているように見えます」と言う。

「例えば、以前だったら麻生太郎さんの放言をニュースとして報道すると、「だから政治家はダメなんだ」という反応がほとんどだったけど、今は「なぜ麻生さんを叩くの?」という声が強い。公権力とメディアと国民という「3つの円」の価値観がひとつの同心円状に重なりつつある。これは全体主義の姿ですね」(是枝氏)

 この是枝氏の言葉は重い。メディアの権力との一体化に対し視聴者の側がその問題を問わなくてはならないのに、そうした目さえ奪われようとしている。安倍政権の暴走を許しているのは、ほかならぬわたしたち自身でもある。

 NHKをひとつとっても、ニュース番組を観る限り、政権の不都合を報じない露骨な内容に不信感を抱き、失望する気持ちはよくわかる。だが一方で、一部のドキュメンタリーや教養番組は、重圧に流されない必死の抵抗を見せているようにも思える。これは他局でも同様だ。

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