思わず涙した忌野清志郎の歌…レクイエムの名手・菊地成孔がマイケル・ジャクソン、団鬼六の死に思ったこと

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〈90年代から00年代の20年間というのは、我等がハナ肇とクレージーキャッツが一人また一人と亡くなっていった時代でした。20年以上かけて、花びらがスローモーションで散っていくような様を見せられる。そういう時代に入り、まだそれが続いている訳です〉
〈こうやってクレージーキャッツだけでなく「シャボン玉ホリデー」という偉大な運動体が、少しずつ少しずつ黄泉の国へと昇っていくんだ。分っちゃいたけど、虚を突かれた気分です。毎週日曜の夜7時。その3分ぐらい前になるとザ・ピーナッツが「スターダスト」を歌い出す。二人の間にハナ肇が割り込む。ちょっと気障な嫌味を言う。ザ・ピーナッツが歌いながらハナ肇に肘鉄。ハナ肇があのフンガフンガみたいな面白い顔して、また来週。
 あの完璧なエンディングが、ゆっくりゆっくり空に昇っていくようです〉
〈青島幸男さんが亡くなった時も辛かった。ワタシは元都知事が亡くなったという風には考えません。クレージーの仲間にしてブレーンの青ちゃんが亡くなったのだと。その後、谷さんも亡くなりました。植木屋はとっくに逝った。ハナも谷も死んだのだ。悲しい童話の集結部の様です〉

 クレージーキャッツの面々がこの世を去っていった時期、それは昭和の巨星たちが次々とこの世を去っていった時でもある。例えば、我が国における官能小説の大家、団鬼六もそのひとり。

〈「昭和」「20世紀」の美学を形作った偉人達が、滑り込むようにどんどん鬼籍に入って行く光景をただ黙って見つめているような気分。
(中略)
 従って、というべきか、故人の急逝は、昭和の一角が完全に終わった事、日本に於ける官能という文化がとうとう21世紀を迎えた事を同時に意味しているとしか私には考えられない〉

 彼らのように、「昭和」、そして、「20世紀」を彩った巨星たちがこの世を去ることでようやく「21世紀」が始まると、菊地成孔は悲しみを胸に綴る。マイケル・ジャクソンの死も、まさにそのようなターニングポイントとなる出来事であった。

〈「言葉もない」という慣用表現がありますが、おそらく生まれて初めて、その状態の中におります。それでもこうして、キーパンチは出来るという事実に、彼が生きた時代。つまり、多くの消費者が皆キーパンチによって言葉を吐き出していなかった時代への追慕ばかりが駆け巡ります。ワタシは今、端的に申し上げて、泣いています。慟哭が止まりません。どうしたら止まるかも分りません。世界中の人々とともに、総ての宗教的な領域を超えて、共に喪に服そうと思います。21世紀が本当にやってきました〉

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