寝屋川中1殺害事件でも星野くんの母にデマ攻撃…ネット上の無責任な犯人探しがつくりだす「私刑」

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 このとき、ネット上では〈Aや上村さんに近いとされる者たちの名前が、一斉にさらされ〉ている。〈検証も裏取りもなく、浮上した名前が「犯人」だと断定され、拡散を続けた〉のだ。そして、〈ネットに実名をさらされた人物の大半は、川崎の事件とはまったく無関係な者たち〉だった。「犯人の一味」「犯人の彼女」と吊し上げられ、実名や顔写真、家族構成まで書き込まれた女子中学生たち、あるいは「凶暴」「凶悪」とされ、あたかも殺害に加わっていたように書かれた男子高校生……。彼女・彼らもまた、この事件の「被害者」である。

〈これらの者たちはまったく事件に関係ないにもかかわらず、永遠にネットへその名前を刻まれてしまったことになる〉
〈しかし、「ネット私刑」に血道を上げる者たちにとって、結果が「あたり」であろうが「はずれ」であろうが、そんなことはどうでもよかった。結果にまで責任を負わないのがネットの流儀である。
「犯人」を探し、そして叩く──こうした回路の中で“正義の鉄槌”を下すことだけがすべてだった〉

 さらに川崎の事件では、容疑者の家族にフィリピン人や在日韓国人がいたことから「外国人」に攻撃が向けられていった。川崎市にはネトウヨが大挙し、〈日の丸や日章旗を手にした数十人が「在日を追い出せ」と絶叫しながら大通りを練り歩〉くというデモ行進まで行われている。参加者は「今回のデモは上村遼太君の弔い合戦です!」とスピーチしたというが、どうして上村遼太さんの死を悼むことが外国人への恨みにかたちを変えるのだろうか。

 このように「ネット私刑」が“在日叩き”などの排斥運動に〈利用される〉ケースはほかにもある。本書ではその例として滋賀県大津のいじめ事件が取り上げられているが、今回の寝屋川中1殺害事件でもそうした“兆候”を見ることができる。

 事実、平田奈津美さんの遺体発見時、まだそれが平田さんかどうかも判明していないような時点から、前述した「News U.S」はタイトルで【在日犯罪】と断定。さらに容疑者の名前が報じられると、2ちゃんねるおよびまとめサイトでは「帰化韓国人で確定」という記事がいくつも流されている。それらは「官報」による帰化記録がソースだというが、いかにもありふれた名前だけを根拠に、帰化情報と同一人物だと「断定」することなど決してできない。しかも、容疑者の本名は、過去の逮捕歴から考えると現在報じられている名前とは違う別名だった可能性も浮上している。そもそも、万が一、容疑者が帰化した人物だったとしても、それを外国人排斥に繋げる思考は断じて許されるものではないのだ。

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ネット私刑(リンチ) (扶桑社新書)

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