神戸か伊勢か広島か? サミット会場選定で安倍首相お気に入りの警察官僚が“暗闘”

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 その結果、外務、警察双方から高い評価を受けた軽井沢が最有力候補に。次いで神戸が猛追したのだという。神戸市の場合、市長の久元喜造氏は、震災大国の復興例として神戸を世界にアピールできるとみて立候補に踏み切った。しかし、難点とされたのが警備上の不備。そこで一計を案じたと、警察庁詰めの記者が打ち明けている。

「今年1月、警察庁長官を退任したばかりの米田壮氏を神戸市の顧問に迎える異例の人事に打って出たんだ。久元市長とは灘高校、東大法学部の同窓の仲。しかも、米田氏と親しい内閣情報官の北村滋氏も、兵庫県警本部長経験者の立場から理解を示したという話もついて回った。2人の警察大物OBの登場で、神戸はがぜん、有力候補に浮上した」

 北村情報官といえば、“官邸のスパイ組織”と評される内閣情報調査室のトップとして、永田町内外のスキャンダルを収集し、安倍首相に御注進している側近中の側近。歴代の情報官といえば、首相への“ご進講”と呼ばれる定期報告会は週1回と決まっていたのに、北村氏はこれを倍の週2回に増やしたばかりか、ほぼ毎日のように首相と面会しているのだ。

 ところが、同じ1月、三重県が名乗りをあげたことで、潮目が変わる。ここでも、警察庁出身の大物の関与が取り沙汰されている。サミット警備の責任者となる内閣危機管理監の西村泰彦氏(前警視総監)だ。

「西村氏は、三重県の名門伊勢高校の俊才で、伊勢志摩エリアの魅力を熟知している。各国首脳を皇室の氏神である、荘厳な伊勢神宮に案内できるというメリットを保守志向の強い安倍首相に訴えているようです」(ある官僚OB)

 同誌は、先の北村情報官と西村危機管理監が、官邸の情報担当として激しい主導権争いをしていると伝えている。ここに前警察庁長官の米田氏が加わり、サミットの会場選びは国民のことなど度外視した「警察官僚の、警察官僚による、警察官僚のため」の威信掲揚の場にすり替えられたというわけだ。

 これほどまでに警察官僚が牛耳るサミットも珍しいそうだが、もうひとつ、警察官僚とは関係なく安倍首相がもち出してくる可能性が取り沙汰されている候補地もある。それは広島だ。

 もし、広島開催が実現すれば、米国のオバマ大統領たち核保有国の首脳が被爆地を訪れることになり、核廃絶に向けたメッセージを発信することが可能になる。とはいえ、核廃絶に無関心な安倍がそんな選択をすることがありうるのだろうか。しかし、自民党のある議員はこう指摘している。

「もし広島を選ぶとしたら、安倍さんの目的は、核廃絶のメッセージというより、欧米諸国の戦争責任追及にカウンターを加えることだろう。被爆の実態を見せることで、自分たちの歴史修正主義的な言動に文句をいわせないようにする、という計算があるんじゃないか」

 いずれにしても、サミットは安倍の独裁をさらに強化するためのイベントになることは間違いないだろう。
(高橋憲一郎)

最終更新:2015.06.01 07:13

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