『とうらぶ』をネトウヨと結びつけるのは妄想…でも『艦これ』アニメは明らかに歴史修正主義だ!

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 だが、これが『艦隊これくしょん』となると、話は別だ。少なくともアニメ版『艦これ』を見る限り、サヨクの偏見や妄想とはまったく関係なく、その底流に歴史修正主義があると考えざるをえない。

『艦これ』アニメの基本設定は在りし日の軍船の魂を持つ「艦娘」たちが人類から制海権を奪った「深海棲艦」と戦うというもの。深海棲艦は基本的に意思疎通が不可能なエイリアンという設定だが、しかし、作中で戦闘になる戦場の多くは旧日本軍が太平洋戦争で戦った戦場と同じだ。ストーリーも何故か太平洋戦争をなぞっていく。そのうえで、史実とちがう展開がところどころに入り、歴史上では大敗したミッドウェー海戦をモチーフにしたと思わしき戦闘で大勝利してしまうのだ。

 第3話の「W島攻略作戦」はウェーク島攻略作戦をモチーフにしており、実際の戦争で沈んだ戦艦と同じ名前の艦娘が海に沈む。轟沈の仕方は異なるものの、これは歴史に沿ったストーリー展開だった。

 だが、第7話からは史実から微妙に外れ、日本にとって都合の良い展開が始まる。轟沈したはずの艦娘が沈む描写もなく大破しただけで終わり、また史実では日本海軍の暗号は解読されこれもミッドウェー敗戦の原因の一つと言われているが、このアニメでは暗号が解読された事態に備えようとする。

 また初めて日本本土が空襲されたドーリットル空襲を再現したと思われる鎮守府への直接攻撃でも、建物が壊滅しただけで艦娘からは負傷者はまったく出なかった。

 そして第11話・第12話(最終回)になって、艦娘たちは「強い力」によって何故か第二次世界大戦と同じような行動をとってしまうのだが、主人公の吹雪の行動は「定めの軛」に抗うことができるという設定が明かされる。敗戦へのターニングポイントになったとして有名なミッドウェー海戦を再現した戦闘で、一度、艦娘たちが負けそうになったところに主人公たちが駆けつけ、欠乏していたはずの物資が急に湧き、本来ミッドウェー海戦に参加できなかったはずの艦娘の修理が間に合って、歴史ではその2年後に就役するはずの大鳳が登場。犠牲を出さずに完全勝利するのだ。

 以上が『艦これ』アニメの流れだが、そこからはどうしても、負けた戦争になんとかして勝ち、敗戦の記憶を塗り替えようとする意志が伝わってくる。

 かつて第二次世界大戦を舞台にした仮想戦記という自己慰撫的なジャンルが流行した時期があった。現実の歴史を知る現代人が第二次世界大戦前にタイムスリップ又は記憶を保ったまま転生して日本を勝利に導いたり、一隻で艦隊を滅ぼせる架空の超兵器やアメリカより先に開発した原子爆弾などを用いてアメリカを蹂躙し日本が大勝利するというのがお決まりのパターンで、まあ、まともな知性を持った人間なら1ページ読むのも苦痛になるような三流の愛国ポルノだ。

 しかし、『艦これ』アニメにはこうした仮想戦記と共通する部分があり、実際、ミッドウェー海戦で日本が勝利するという先述した結末も、これら仮想戦記と共通している。

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