左巻き書店の「いまこそ左翼入門」①

虐げられた無名の者たちよ、ピケティよりもマルクス『共産党宣言』を読め!

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 いまを生きる読者は、資本主義とは何かをつかもうとする手がかりとしてこのような記述に興味をそそられるだろう。あたかも現下の経済のグローバル化を解説しているかのようだ。もちろん資本主義の世界市場展開についてもいろいろ示唆に富んでいる。さまざまな角度から玩味するに十分値する。しかし、かと言って、現実と合致した文章を発見して予言者の如く崇めても仕方ない。

 むしろ、ここではマルクスの弁証法的な視点に注目すべきだろう。マルクスが弁証法的に歴史を描いているということの意味は、対立する階級が歴史を推進するということではない。ブルジョア社会の発展がそのままプロレタリア階級の勃興を準備する道程である、という裏腹な二面性の同在を指摘したことにある。

 それはこういうことだ。「ブルジョア階級が漫然と担ってきた工業の進歩は、競争による労働者の孤立化に代えて、統合による労働者の革命的団結を作り出す、それゆえ、大工業の発展とともに、ブルジョア階級の足元から、かれらが生産し、また生産物を取得していたシステムの土台そのものが取り去られる。かれらは何にもまして、かれら自身の墓掘り人を生産する。かれらの没落とプロレタリア階級の勝利は、ともに不可避である」

 では、その逢着点としての共産主義とはどのようなものか。

「共産主義を特徴づけるものは、所有一般の廃止ではなく、ブルジョア的所有の廃止である」とマルクスは端的に定義する。

 私有財産が国有化されることが共産主義だという通俗的な理解とは異なり「共産主義は、社会的生産物を取得する権限を誰からも奪いはしない。ただ、この取得によって他人の労働を隷属させる権限を奪うだけである」「資本は、共同の産物であり、多くの人たちの共同の活動によってしか、そして究極的には、社会全員の共同の活動によってしか、機能し続けることはできない」「だから、資本が共同の財産に、社会全員に属する財産に変わったとしても、個人の財産が社会の財産に変わるわけではない。変化するのは、所有の社会的性格だけである。つまり、所有はその階級的性格を失うのだ」

「生活を再生産するための労働生産物を個人が取得することを止めさせようなどとは」考えていない。多くの人の共同によってしか、つまり社会的にしか生産されないものを、支配階級が占有することがなくなるのである。「やっぱりオレの財産を奪おうとしてるじゃないか」という者はいるだろう。それがブルジョア階級だ。プロレタリアは何も失わない。なぜなら失うものを何も有していないからだ。プロレタリアが失うものは鉄鎖だけである。

 プロレタリア階級が政権をにぎったらとるべき政策として、高度な累進課税や相続権の廃止などが挙げられている。これも近頃よく耳にするよな。

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