昔なら有吉の年収もわかったのに…長者番付はなぜ廃止されたか? 背後に格差助長政策

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確定申告シーズンまっさかりだが富裕層は…(国税庁ホームページより)


 確定申告のピークを迎えているこの時期。なけなしの金をさらに税金でもっていかれる身としては、あの企業経営者や芸能人、作家がいったいどれくらい稼いで、どれくらい税金をおさめているのか、気になるところだ。

 たとえば、今年だったら、長者番付1位はソフトバンクの孫正義か、ユニクロの柳井正か、とか、毎日のようにテレビに出ている有吉やマツコの年収はいくらくらいなのか、とか、作家の1位はやっぱり百田尚樹センセイなんだろうな、とか……。

 だが、そうした金持ちの収入、いわゆる「長者番付」が、ほんの10年前まで公式発表されていたのをご存知だろうか。

 正式名称は高額納税者公示制度といい、所得税の額が1000万円以上のすべての高額納税者の納税額を各税務署が発表していたのである。納税額がわかれば、当然、年収も推定できる。

 そのため、毎年5月の公示日にはマスコミが有名人の居住する地域の税務署を一斉取材。ワイドショーやスポーツ紙はこぞって「芸能人長者番付」「企業経営者長者番付」「作家・文化人長者番付」のランキング表を大々的に報道した。

 この制度、「第三者のチェックによる脱税けん制効果」という目的から導入された制度だったが、実際に前年、誰がどれだけ稼いだかだけでなく、本業以外の相続、投資などで大きな収入があったことや、活躍の割に納税額が少ない場合はセコい節税をしていることなども一目瞭然であった。

 ところが、2005年4月1日にこの制度の廃止が発表され、実際に06年(05年度分)から廃止されてしまったのだ。

 廃止の名目は個人情報保護法が全面施行された動きに合わせて、個人のプライバシーを守るためということだったが、背後には、自民党政権の格差助長政策があった。

 当時、小泉政権は「富める者はもっと富める社会」を志向し、株式配当・譲渡益などの減税、土地取引関係の減税、相続税・贈与税の税率引き下げなど、金持ち優遇政策を次々打ち出していた。今後、企業経営者や役員の年収が大幅に増大することが予想され、そのため、財務省はこのまま長者番付を発表し続けたら、国民の反発を買いかねないと判断したと言われている。年金負担の増大や消費税増税を国民に強いる際に、富裕層がやたらとクローズアップされるのは得策ではない、と踏んだのだ。

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日本の長者番付: 戦後億万長者の盛衰 (平凡社新書)

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