安倍首相はほくそ笑んでる? イスラム国人質事件で「戦争のできる国」づくりが加速

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 武力に頼る政策が敵意と憎悪を生み、そうして引き起こされるテロが愛国心を高ぶらせる。為政者に抗う言説は排斥され、為政者の求心力は高まる。国家という怪物が肥大化し、暴走する。戦後日本の平和主義をかなぐり捨て、「フツウの国」をつくるのだと吠える安倍政権にとって、この状況はまさに望んだものであると言う他ない。

 すでに、菅官房長官は19日の記者会見で、自衛隊をいつでも海外へ派遣できるようにする恒久法案を、今月26日招集の通常国会に提出する考えを明言した。安倍首相は中東ペルシャ湾での自衛隊による機雷掃海についても前向きに検討しており、法が整った暁には中東派遣を断行しようという思惑があるとも伝えられている。

 さらに3月以降には、日本が侵略やテロを受けた際の対応を定めた武力攻撃事態法の改正他、集団的自衛権関連の法整備が控えている。自衛隊の活動範囲をどこまで認めるかが論点のひとつだが、そもそも、昨年安倍政権が閣議決定した集団的自衛権の「限定行使」とは、地理的な範囲を限定することをまったく含んでいない。「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」と政権が“主観的に”認めた場合という意味において「限定」するという話にすぎなかったのだ。

 今、政府は、日本が直接攻撃を受けていなくとも、集団的自衛権に基づいて自衛隊が武力行使できるという概念を新設する方向で検討している。

 本来、海外の邦人の保護は、集団的自衛権とは別の次元の話だ。だが安倍政権は、今後一層激化していくと見られる中東など紛争・戦争地域への自衛隊派遣を見越して、今回の人質事件を典型的なケースとして喧伝し、イスラム国の国際的脅威を強調、武力行使の根拠とするだろう。

 さらに言えば、自らの失態を棚上げしつつ、「自衛隊による邦人救出作戦も考慮したが、憲法9条による制限があった」などと弁明する可能性も高い。

 シナリオはこうだ。まずは自衛隊法などを整備し、米国を中心とする「対イスラム国戦争」へ、従来よりも踏み込むかたちで“参戦”する。「実績はつくった。さらなる国際平和貢献が求められている」などとして国民投票に踏み切り、憲法を改正。現行9条を骨抜きにし、正真正銘、日本を“戦争のできる国”にする──。

 これが妄想でないことは、今後、安倍政権がどう動くかをみていれば明らかになるはずだ。
(エンジョウトオル)

【検証!イスラム国人質事件シリーズはこちらから→(リンク)】

最終更新:2017.12.09 05:08

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