『アナと雪の女王』は原作レイプなのか!? ディズニー原作改変の功罪

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 そんなディズニー作品に対しては、宮崎駿や高畑勲も以下のような批判を口にしているという。

「ディズニーの作品で一番嫌なのは、僕は入口と出口が同じだと思うんですよね。なんか『ああ、楽しかったな』って出てくるんですよ。入口と同じように出口も敷居が低くて、同じように間口が広いんですよ。ディズニーのヒューマニズムの、あの偽物加減とかね、ああいうもんの作りものくささみたいなのがね。だから、やっぱりディズニーの最高の仕事というのはディズニーランドだったんだなっていうふうに思います」(『Cut』1990年1月号/ロッキング・オン)

「ディズニーが好きじゃないのは、ひとつには、アニメで何でもつかまえることができるという楽観主義。もうひとつは、観客の想像力を冒険させない、まったく日常的世界と同じ次元の表現であるからです。新しい世界がひろがるのではないんですね」(『月刊アニメージュ』1985年2月号/徳間書店)

 では、『アナと雪の女王』も、これまでの『白雪姫』や『人魚姫』のような、“ディズニー化”がなされているのだろうか?

 まずは、原案となった『雪の女王』のあらすじを見てみよう。『雪の女王』は、主人公の少女・ゲルダと仲良しの少年・カイの物語だ。ある日、カイの心臓と目に悪魔の鏡の破片が刺さり、性格が急変。そのうえ、雪の女王に氷の宮殿へ連れ去られてしまったため、カイを助け出すためにゲルダは1人旅に出るというもの。この作品は7つのエピソードで構成された物語で、アンデルセンの童話の中では最も長い物語とされている。

 一方『アナと雪の女王』の主人公は、エルサとアナという王女姉妹。姉のエルサは、生まれつき触れたものすべてを凍らせる魔法の力を持っていたのだが、あるときその力で国中を凍りつかせ、自ら築いた氷の城に閉じこもってしまう。そんな姉を救いに行くアナだったが、エルサの魔法によって心臓を傷つけられ氷結し、一度は死に至る。しかし、エルサに芽生えた「真実の愛」によって氷はとけ、アナは無事生き返るというもの。

 著者の叶は『アナと雪の女王』と『雪の女王』は、時代設定や舞台以外で「二つの作品間に人物や物語など「基本的な設定」の共通項を見出すのは難しい」と指摘。それなのに「いつの間にか『雪の女王』が「原作」であるかのように扱われ」ており、「曖昧に同一視され、やがて一括りにされ」ることを危惧しているのだ。2つの作品は「タイトルもテーマも別の作品として相応に扱われるべき」もので、「オリジナルの『雪の女王』が影としてかき消されて良い筈はない」と熱く語っている。

 たしかに“雪の女王”“氷の宮殿”といったモチーフ、性格が急変してしまった友人を助けに旅に出る少女ゲルダと、突如魔力を使い出し姿を消した姉エルサを助けに旅に出る妹アナなど、いくつか共通点も見られるものの、ストーリーもキャラクター設定もかなりちがうものになっている。なかでも、タイトルにもなっている“雪の女王”のキャラクターが両作ではまったくちがう。『アナ雪』における雪の女王とは姉エルサのことであり、アナと雪の女王エルサの姉妹愛が物語のテーマのひとつとなっていることは、非常に大きな改変だ。叶が指摘するように、もはや別の作品といってもいい。

 というのも、アンデルセン版とディズニー版の“雪の女王”のちがいは、単にキャラ設定がちがうというレベルでなく、作品の根幹となるテーマそのもののちがいでもあるからだ。

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