C.R.A.C.野間易通「ネット右翼の15年〜『自由』が民主主義を壊していく」第3回

高市早苗はいかにして“ネオナチ”と出会ったか──「行動する保守」の源流

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

 89年の東欧革命が91年のソ連崩壊にいたったことで東西冷戦は終了し、「共産主義は失敗だった」「左翼思想は終わった」という雰囲気が支配的になっていた。日本ではそれまで主流だった左派リベラル言論に対抗するオルタナティヴとして、右派/極右言論が台頭しはじめていた。たとえば1992年の風の会結成と野村秋介の選挙出馬、そしてその野村が翌年、朝日新聞社屋内で衝撃的な拳銃自殺を遂げたことなどの社会的インパクトは大きかった。

 野村秋介はテロリストではあったがレイシストではなく、アウトロー出身のインテリ右派論客として『朝まで生テレビ』などでも人気を博していた。朝日新聞や朝日新聞的なものについて冷静な語り口で論理的に批判する彼の姿は、一水会の鈴木邦男とともに、黒塗りの街宣トラックと特攻服という従来の「右翼」のイメージとはかけはなれていた。「右翼は思っていたほど怖くなさそうだ」というパブリックイメージの形成は、この頃に始まったのではないかと思う。

 何よりも私自身が、野村秋介の著作を新鮮な気持ちで読んだし、石原慎太郎陣営の黒シール事件において新井将敬を徹底的に擁護し、石原を厳しく批判した彼の姿勢に大きく感銘を受けた。「レイシストをしばき隊」にも、 毎年10月20日、野村の命日に行われる追悼集会である群青忌に出るような野村秋介の信奉者は何人かいてみな右翼を自称していたが、私から見れば天皇に関する立場以外、どう見てもリベラルでしかないような人ばかりである。

 野村が朝日新聞社屋で自殺した翌年の1994年、NSJAPがニュース番組や雑誌記事に取り上げられたりするなかで出版されたのが、当時自民党東京都連の広報部長であった小粥義雄の書いた『ヒトラー選挙戦略』という本であった。これも今年9月にネット上で大きな話題になったので覚えている方も多いかと思う。高市早苗が推薦コメントを寄せていたあれだ。この本はイスラエル大使館とサイモン・ウィーゼンタール・センターからの抗議によって発売後まもなく回収となり、その後市場からは姿を消した。

 もっとも、このことをもって当時から高市がネオナチ思想にかぶれていたとは言えない。当時の彼女は政治的には保守リベラルで、自民党員ですらなかった。彼女がタカ派として知られるようになるのは2000年代なかば、小泉郵政選挙の頃からである。私は本の内容は未読だが、高市がコメントを寄せた詳細な宣伝パンフによれば、この著作それ自体も「悪者のように言われているナチスにも優れた部分はあった」式の論調で、つまりは既存の価値観や見方から自由になって極右やナチスを再評価しようという動きの一端であった。文字通りの見直し=revisionだが、それが歴史修正主義(revisionism)への第一歩であったことは、その後日本が辿った20年間が証明してしまったのではないか。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

風と拳銃 ~野村秋介の荒野~

新着芸能・エンタメスキャンダルマンガ・アニメビジネス社会カルチャーくらし教養

人気記事ランキング

総合
いいね! 数
1 橋下徹が籠池証人喚問以来、完全沈黙
2 昭恵夫人が籠池妻に小川榮太郎を紹介
3 マツコが“忘れられない男”と首都高で
4 2枚目のFAXを封殺、官邸の情報操作
5 籠池と松井の接点を大物府議の元秘書が
6 ニュース女子・沖縄デマはなぜ生まれた
7 籠池証人喚問で自民党議員の質問に唖然
8 安倍政権御用ジャーナリスト大賞
9 稲田夫が籠池と財務局との交渉に同席
10 安倍応援団の情報操作に騙されるな!
11 不倫女性が告白する本音と日常とは?
12 昭恵夫人付役人から籠池に予算化報告
13 宇多田の復帰と「自死遺族の会」
14 松本人志が森友問題から逃げた!
15 “第二の森友学園”関係者を最高裁判事に
16 浅田舞が真央との不仲は母のせいと告白
17 安倍100万円振込票と長女の目撃証言
18 恵俊彰が田崎史郎を「政権の代弁者」と
19 宮古島、石垣島が米中戦争の捨て石に!
20 山口敬之、“安倍太鼓持ち”の歴史
PR
PR
1籠池独占取材した菅野完爆弾会見の中身
2小籔千豊「教育勅語は悪くない」は無知
32枚目のFAXを封殺、官邸の情報操作
4 昭恵夫人付役人から籠池に予算化報告
5安倍が防大卒業式で軍人勅諭ばり訓示!
6籠池理事長が「安倍首相から100万円」
7籠池理事長が稲田朋美との関係を証言
8安倍100万円振込票と長女の目撃証言
9教育勅語復活論者の現代語訳はニセ物だ
10迫田、松井、昭恵も証人喚問せよ
11“第二の森友学園”関係者を最高裁判事に
12安倍応援団の情報操作に騙されるな!
13籠池証人喚問で自民党議員の質問に唖然
14森友で橋下と松井が国の圧力暴露も…
15昭恵夫人の口利きで8千万円の予算が
16田崎が“籠池が稲田にセクハラ”の噂を
17稲田夫が籠池と財務局との交渉に同席
18籠池の依頼で昭恵夫人が口利きか
19松井知事が森友認可前に私学課に圧力?
20国税の税務調査を使った報道への圧力
PR
PR

人気連載

アベを倒したい!

室井佑月

室井佑月が斎藤貴男と「共謀罪」を徹底批判!「安倍政権に逆らう人が片っ端から逮捕される」

アベを倒したい!

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄

"体育会系相田みつを"松岡修造は本当に「ブレない男」なのか? 年を追うごとに変わっていく修造語録を読み解く

「売れてる本」の取扱説明書

ネット右翼の15年

野間易通

高市早苗はいかにして"ネオナチ"と出会ったか

ネット右翼の15年

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

戦争を放棄せよ! 軍事力がなくても侵略と闘う方法はある、自由のために闘える!

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」