男脳・女脳に根拠なし!「◯◯しない男、◯◯しない女」の煽りに騙されるな!

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 まだまだ続けます。
「シンプルに言えば、仕事は男のすべて。恋愛でも結婚でも結局のところ主役は女ですが、仕事なら男が主役になれます」「多くの女性が仕事に求めるのは『やりがい』。(中略)心の底では、職場のみんなと楽しく『ままごと』がしたいと思っているので、出世には興味がありません」とのこと。絶句。

「男は説明好きだけど、女は説明下手」なので、「男的な対応を求める男性たちは、『説明下手』な女性たちに『ちゃんと説明してくれ』と願うし、女性たちは『そんなの、言わなくてもわかるでしょう』とイラ立ちます」とのこと。絶句。

 まだまだ続けたいのだが、「絶句。」を繰り返すだけで原稿料をいただくのは忍びないし、万が一、同レベルで議論に応じているように読まれるのも心外なので、もう少し議論を深めていく。

 脳科学を用いて性差を読み解いたベストセラーにアラン・ピーズ&バーバラ・ピーズ『話を聞かない男、地図が読めない女』(主婦の友社)があるが、この手の、性差を脳科学で論証する本には科学的根拠が一切無いと喝破したのが斎藤環『関係する女 所有する男』(講談社現代新書)だ。『話を聞かない〜』を、学術的根拠に欠ける「あるあるネタ」を語っただけの本とし、「『差異の同一性』を繰り返し確認し、そこから何がしかの安心を得たい」だけにすぎず、これらのコミュニケーションは「情報量が少ないほど、言い換えるならば冗長性が高いほど快楽が増す」ようにできていると分析した。

 つまり、「そうだよね〜」「わかる〜」とポップに言い合えるネタを欲し続ける人たちに同内容の提供を繰り返しているだけで、なんら発展性はない。「そうだよね〜」「わかる〜」が繰り返されることを斎藤は「再帰性の快」と呼んでいるが、この再帰性が保守派やバックラッシュの扇動に使われやすいことも指摘している。

 斎藤の著書からの孫引きになるが、冒頭の鈴木章浩議員の座談会に登場した八木秀次は、西尾幹二と共著『新・国民の油断』(PHP研究所)を刊行しており、そこには「男性が女性より優れているかどうかの問題ではありません。男女のあいだには優劣の差なんかない。ただ女性は女性という生理的宿命を背負っており、そこを起点にして考えなくてはならない。男性もまた、男性以外は持っていない生理的宿命を背負って生きている」(西尾の発言)とある。

 生理的宿命とはなにか。この本の中で八木は、女帝容認論を批判すべく、男系でなければ神武天皇以来の「Y染色体」の系統が絶えてしまうという論理を展開した。斎藤は「歴代天皇の身体を単なる染色体の容器扱いするような、そうとう『不敬』な議論」と断じた。

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