NMB48大型新人・須藤凜々花の“哲学愛”を哲学研究者が検証

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

 さて、ストーはドラフト会議で、“いまの歴史は昔の人の考え方が積み重なってできている。昔の人の思想を勉強して新しい世代へ”云々と述べたという。いま紹介したミルルン師匠の仕事を考え合わせると、彼女の言葉がよりいっそう胸に迫ってくるのではないだろうか。過去の偉大な哲学者は、たとえミルルン師匠のように現在の流行とは無縁の存在になったとしても、私たち現代人の生活や文化にしっかりと息づいている。それを改良し次代へと引き継いでいくのは、私たちがすべき重要な仕事のひとつだ。ミルルンを師匠と仰ぐストーの志は、この点で見事に一貫しているのである。

 このように考えると結論は明らかだろう。少なくとも現時点では、ストーの哲学好きは本物であり、立派なハードコアをもつものだといってよいのではないだろうか。
 
 なお、20世紀ドイツの哲学者ヤスパースについては、「ヤスパースさんかっけー」以外の手がかりがないので本当にわからない。ただ、彼が当時台頭してきたナチスに反抗して大学を追われた後、妻(ユダヤ人であった)の強制収容所送致にも抵抗し、自宅にふたりで立てこもりこれを阻止したというエピソードを知ったとき、私もまた「ヤスパースさんかっけー」と魂を震わせたことを、ここに記しておこう。

 最後に、そんなストーは今後アイドル活動で哲学をどのように活かしていけばよいのだろうか。そもそも私などが考えることではないし、当然ストーから頼まれたわけでもないのだが、行きがかり上提案しておくと、AKB系列初の積極的炎上商法というのはどうだろうか。もちろん失言や不祥事による炎上ではない。哲学的議論の炎上である。公式ブログのコメント欄に群がってくる大人たちを相手に、合気道の達人・塩田剛三の自由技演武の要領で燃え上がるような丁々発止を展開すれば、焼け跡には幾冊かの哲学書が残されることになるかもしれない(しらんけど)。

 ともあれ、逸材であることは間違いない哲学者ストーの、今後の活躍を期待してやまない。あの『アンクル・トムの小屋』のハリエット・エリザベス・ビーチャー・ストー、通称ストー夫人という偉大な先輩もいるのだ。きみは孤独ではない。     
(吉川浩満)

最終更新:2017.12.07 07:39

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

NMB48大型新人・須藤凜々花の“哲学愛”を哲学研究者が検証のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。AKB48NMB48須藤凜々花の記事ならリテラへ。

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄