日本の嫌韓本が韓国の“反日ビジネス”に丸乗りするパラドックス

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 だが、この「親日老人撲殺」事件は、日本だけでなく、韓国でもまったく知られていないという。黒田勝弘・産経新聞ソウル駐在客員論説委員は、今年2月に週刊誌「週刊朝鮮」に寄稿した原稿の中で、この「親日老人撲殺」事件について次のようにふれている。

「たとえば、昨年にソウルで『日帝時代はよかった』と言った老人が酒に酔った30代に殴られて死んだという事件について問い合わせの電話があった。聞いてみると、日本で韓国発のネット情報で知ったという。酒に酔った者が老人相手に殺人までしたなら、いろいろ原因があるのだろうが、韓国のネット情報は反日事件として日本に送ったのだ。その結果、日本では『韓国の反日感情はそれほどひどい』と興奮する」

 つまり、“嫌韓本”は韓国のあやふやなネット情報に丸乗りしたにすぎないようなのだ(しかも、丸乗りしたはずの犯人の年齢が「38歳」(シンシアリー)、「37歳」(室谷)とバラバラである)。

 さらに問題なのは、今回の「親日老人撲殺」事件の大元のニュースソースがどうも「韓国紙『世界日報』」だということだ。「世界日報」といえば、宗教団体「統一教会」(世界基督教統一神霊協会)系の新聞である。韓国情勢に詳しい新聞記者はこう話す

「『世界日報』はバリバリの反共で報道というよりもオピニオン色が強い。もし、日本のマスコミのソウル特派員が『世界日報』のニュースを日本に配信したらデスクに『何を流してきてるんだ』といわれるでしょうね」(韓国情勢に詳しい新聞記者)

 もちろん、「世界日報」のニュースだからといってガセときめつけるつもりはないが、少なくとも韓国の主要メディアでは、「世界日報」の報道の前も後もこの事件を取り上げて、老人撲殺の原因が親日発言だったと報じたところは皆無だった。
 
 黒田氏はこのケースをテキストに、韓国の一部のメディアが極端な“反日ビジネス”を展開しており、それが結果的に日本の反韓ブームをあおっているのではないかと韓国側に注意を促している。しかし、それは日本も同じだろう。反日ビジネスで極端な論調を展開している韓国発のネット情報を真偽の検証もしないまま鵜呑みにして、日本人の韓国憎悪を煽っているとしたら、それはあまりに不毛な“嫌韓ビジネス”というしかない。
(エンジョウトオル)

最終更新:2014.07.18 08:04

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