祇園祭、寺院、町家…京都本の取材で飛びかう“謎のお金”

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 さて、京都の写真掲載に関わるお金の話は、なにも祇園祭に限ったわけではない。日本人の多くが修学旅行で訪れる、名だたる寺院が金銭を要求してくるのだ。あの金ピカのお寺も、銀に輝かないお寺も、舞台で有名なあのお寺も、写真を掲載するとなると「志納金」という名目でお金を納めなければならない。もちろん、彼らからすれば「信仰対象を守る」「文化財保護のため」という大義があるのだが……一枚の写真掲載に数万円、場合によっては10万円を超える大金が動いているのだ。単に許可印を押すだけのお坊さんの肥やしになるかと思うと、京都がもたらす崇高な感動も霞んでくるだろう。しかも、税法上、認可を受けた宗教法人は公益法人に属するため、宗教活動で得た収入にすれば税金がかからず、お寺にとっては丸儲けになる。

 また、地元のガイドブック編集者によれば、「不思議なのは「志納金」なのに、あきらかに消費税を含んだ請求書が届く時がある」とのこと。どうか仏に誓って、そのお寺には税務処理をしていてほしいものである。

 京都のすごさは、それだけではない。「◯◯家」と呼ばれる文化財の指定を受けた旧家がいくつか現存するのだが、そうした個人の住まいである町家の撮影も一部有料になる。さらに、観光客の集まる石畳の路地にも保存会なるものが存在し、単なる“道”の掲載に数万円のお金が発生したケースも。京都の「世界遺産」を特集しようものなら「新車一台分の掲載料は覚悟する」必要があるらしく、地元出版社の社長は「遺産を紹介したらこちらは1円も遺産を残せなくなる」と皮肉混じりに笑う。

 京都以外の地方では、PR会社に莫大なギャラを払い、あの手この手で観光客を誘致しようとしている自治体もあるという。放っておいても国内外から観光客が訪れ、寄付金やお布施、御守りの販売だけでも多くの“収入”を得られるはずの京都の有名寺院。そのうえ志納金も徴収するとは、なんともうらやましい話だ。浄土におわす彼らのセンパイたちが、今の状況をどのように見ているのか、一度聞いてみたいと思うのは筆者だけではないだろう。

 ちなみに、京都において「志納金」を要求する神社仏閣の多くは“お寺”である。冒頭で紹介した祇園祭は八坂神社の祭礼であるが、八坂神社は一銭たりともお金を要求しない。あくまで、各山鉾町の保存会へ納付するのである。この夏、祇園祭に訪れた方は、祭神を祀る八坂神社に立ち寄り、お賽銭をあげてみてはいかがだろう。京都のウラ事情を知った身からすると、お寺にお賽銭をあげるよりもご利益があるように思えるのだが……。
(文室 竹)

最終更新:2014.07.13 08:04

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