あなたも被害者に? マインドコントロール殺人の恐怖の手口

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 メンバーに与えられる恐怖はかなり強いが、彼らは同時にその恐怖から逃れる事の出来る唯一の方法を教えられている。「その方法とは、組織にとどまり活動することである」。つまりその集団から離れることによる不安や恐怖のほうが、はるかに恐ろしい事だという刷り込みを与えておくのである。

 いったん集団に取り込まれてしまうと、この巧妙な手口から抜け出すのはかなり難しい。マインドコントロールに支配されないための一番確実な方法は、そういう集団との接触を避けることだが、これもけっして簡単な事ではない。というのも、今回の福岡のリサイクル業者も、北九州の松永も、尼崎の角田も、一見すると普通の生活を送っている一般市民であり、見分けがつかないからだ。

 しかも、「被害者へのファーストコンタクトは「誠実で魅力的な勧誘者」が担う事が多い。その人物が友人や知人であれば「被勧誘者の心理状態が脆弱になるタイミングをうかがっている」こともある。

「意外で否定的な出来事を経験したとき、人々はその原因を自発的に探ろうとする傾向にあるという。そういうとき、人は自ら発した問いへの答えを求めて自分自身で納得のゆく答えが見出せないと、他者への依存性が高まる事になる」(同書)

 まさに、悩んでその原因を考えているときなどに“心の隙間”に入り込まれてしまうのだ。そして、ファーストコンタクトに成功すると「あなたは……しなければならない、さもないと」といった強制的なメッセージや「あなたは変わる事ができる」「あなたは変わる事が出来て、あなたの持つ潜在能力を引き出す事ができる」など自己実現的なメッセージや、問題の解決策を提示して誘い込んでいくのだという。

 尼崎事件で角田に命じられて自身の母親を殺害し、傷害致死などの罪に問われた大江香愛・裕美、そして裕美の元夫・川村博之の3名も、まさにこうしたプロセスをたどっていた。

 裕美と川村は、かつて川村が勤めていた鉄道会社に角田がクレームを入れたことがきっかけで角田と急接近し、いつしか家族の問題も相談するようになる。主導権を握り始めた角田は家族会議と称して川村夫妻や香愛、その婚約者を招集した。香愛によれば、

「角田がなんか、話を仕切り始めました。そしてしばらくして私の婚約者に対して、いきなり怒り始めて、挨拶しなかったとか、『何やのあんた、帽子も取らんと!』と怒鳴り散らしました。どのくらいの時間かは覚えてないですが、すぐには終わらなかったです。終わったのは夜中、明け方…3時くらいと思います。角田が『夜、気ぃつけて歩きや。警察は24時間守ってくれへんで』と脅してきました」

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